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てんかん・けいれん

2007年01月09日

「てんかん」はどんな病気?

 皆さんは「てんかん」ってどんな病気だと思われているでしょう?世間で知られている「てんかん」のイメージは、日常生活の場で何の前触れもなくいきなり倒れてけいれんする恐ろしい病気で、「治らない」というような認識であることが多いようです。

 ですが、そのような日常生活での発作が抑制し得ない患者さんというのは、そのてんかん自体が難治な場合だけで、てんかんにおける難治性てんかんの割合は2割程度といわれています。それにも関わらず、日常生活で実際に一般の人に目撃されるてんかん患者というのは、結局そういった難治性のてんかんである場合が多いので、てんかんを「恐ろしい病気」だというふうに捉えてしまうようです。

 通常のてんかんは、圧倒的に良性のものが多く、発作の回数も人によりますが、ごく少数のことが多いので、かえってそういう良性のてんかんのことは世間に知らせないままになり、世間の認識を変えることができないのです。

  てんかんとは脳細胞が異常に興奮して、けいれんを起こす病態のことを言います。通常、基本的に脳細胞はある程度規則正しい活動をしています。この活動は電位や電流に換算することができ、これを観察するのが脳波です。心電図というのがありますよね。あれは心臓のそういった働きをみているものです。

 ただし、心電図とは違って脳波はその電流のとても微弱なことと、複雑なことが特徴です。それはともかく。脳波をとるとそういった規則正しい「波」からはずれている「異常に興奮している波」を捕まえることができます。

 これといったきっかけもないのにけいれんを起こし、脳波でこういった波を捕まえることができたならその子どもの病態を「てんかん」と呼びます。ただ、ひと口にけいれんと言っても、その中身はとても複雑で、熱性けいれんで起こるような大きなけいれんから、外から診てもほとんどわからないようなけいれんまでさまざまです。

 倒れたりすることはなくても呼びかけに応じずぼーっとしている、その場にそぐわない行動をする、顔色が悪くなり意識がはっきりしない状況になる、などなど症状をあげていけはきりがありません。

 「てんかん」は非常に頻度の多い病気で、200人に1人の割合で発症します。そしてその8割程度は薬でコントロールし、治すことができるてんかんです。日本では、てんかんという病気に対する偏見が非常に強く、てんかんであると診断されると悲観的になることが多いようですが、最初に述べたように、てんかんは非常に幅の広い病気であり、適切な診断治療によりほとんど治癒可能な病気であることを知っておいてください。

「てんかん」の発作

 まず、てんかんの発作についてお話しましょう。最もわかりやすいのは、全身性強直間代性けいれんです。これは手足に「ぎゅー」っと力が入って強直した後、手足がビクッビクッとけいれんする発作です。この発作は「熱性けいれん」でよく認められるタイプのけいれんです。

 他には後でお話しますが、部分発作が二次性全般化した際に認められる発作です。これは脳全体に発作の波が出ているときに起こります。

 この全身性強直間代性けいれんによく似ているけれど、そうではなくて、最初、片側の口や眼の周りがびくびくし始めて、それがだんだんそのびくびくしているほうと同じ側の手足がびくびくしはじめるという発作があります。これはローランド発作と呼ばれます。脳の両側の真ん中くらいに縦に走る溝があり、その溝のことを「ローランド溝」と呼びますが、そのローランド溝に沿って人間は手足を動かしたり、口の周りの筋肉を動かしたりするもとの細胞が並んでいます。

 で、そこから発作の波が出ている場合にはこのような発作が起こり、こうしたてんかんを「ローランドてんかん」と呼んでいます。小児で最も多い良性の部分てんかんはこの「ローランドてんかん」で、発作の回数も少なく抗けいれん剤で容易に抑制することが可能です。場合によっては治療しなくても治る場合もあるほどです。

 ただ、発作波自体は思春期くらいまで残ることが多いので、安全のために比較的長く抗けいれん剤の内服が必要になってくる場合が多いのが残念です。

欠神発作について

 次に欠神発作についてお話しましょう。欠神てんかんは倒れたり体がけいれんしたりはしません。周りから見たら普通に座っているだけなのですが、声をかけても返事もしないし、ぼーっとしている状態のことです。

 身体的なけいれんがないので、けいれんだと気付かれにくい発作ですが、これも脳の全体に発作波が出ていて、脳の意識レベルの低下を起こしている状態です。欠神てんかんにも非常に有効なお薬があるので、大抵の場合(発作のタイプがこの欠神発作単独である場合)、比較的すぐによくなることが多いのです。

 ただ、難治てんかんの発作の一つとしてこのタイプが存在する場合にはなかなか抑制が困難なことがあります。

いろいろな発作

 欠神発作と似ているようで違う「複雑部分発作」というのがあって、これも倒れたりけいれんしたりはしないけれど、あたかもちゃんと自分で行動しているように他からは見えるのですが、その行動がその場の状況とは全く関係ない行動をしてしまっている発作です。

 この発作は脳の横の部分、側頭部の部分に発作波がある場合に起こります。

 他にも脳の前から発作波が出ている場合、後ろから波が出ている場合など、それぞれの発作波の出る部分によってそれぞれの発作型があります。

 多くの場合、発作がないときでもそれぞれの臨床症状に合致した場所から発作波が出ていることが多いので、発作のないときの脳波で「てんかん」の診断は可能ですし、それがどういったタイプのてんかんであるかはわかります。

 ただ、発作には他にもいろいろなパターンがあり、発作があっているときの脳はを取らないと、それ自体発作かどうか判定不能の場合も存在します。

「てんかん」のタイプ

 さて、ここまでに全般性だとか部分発作だとかいう言い方が出て来ましたが、ごく簡単に言えば、全般性と言うのは、脳の全体から発作波が出ている状態のことで、部分性というのは脳の一部にその発作波が限局している場合のことです。

 全般発作には先に述べた「全身性強直間代性けいれん」「欠神発作」そのほかには「脱力発作」「失立発作」「ミオクロニー発作」などと呼ばれているものがあります。そして部分発作には先に述べた「ローランドてんかん」「複雑部分発作」、それ以外に今回詳しく述べなかった「前頭葉てんかん」や「後頭葉てんかん」などがあります。

 部分発作は脳の一部に発作波が限局していますが、その一部に限局していたてんかん波が、発作が持続することによって脳全体に広がっていくことがあります。これを部分発作の二次性全般化と呼び、臨床症状としては全身性強直間代性けいれんをおこします。

 一般の方は(専門ではない場合には医師でさえ)、この時点で初めて発作と認識することも多いので、けいれんというとなんでもかんでも全身性強直間代性けいれんということになってしまうのかもしれません。ただ発作のタイプによって、選択する抗けいれん剤が異なるので、それがどういったてんかんなのかということをきちんと診断することは、治療側にとってはとても重要なことです。

 また、最初の段階でどのタイプのてんかんかということを診断することはその予後の予測にもつながり、非常に患者さん側にとっても重要なことです。ですから、その発作を観察していただいた情報が大事ということになります。

「てんかん」と遺伝

 てんかんの中には遺伝性のものがありますが、すべてのてんかんが遺伝性のものではありません。

 先に述べた「ローランドてんかん」や「欠神てんかん」は遺伝性の強いてんかんですが、いずれも非常に良性のてんかんです。このように遺伝性の強いてんかんの方が返って予後が多いものがあり、決して悲観することはありません。中には脳の構造異常そのものの遺伝によって起こってくるてんかんがあり、この場合は難治な場合もありますが、このようないことは極めて頻度が少なく、多くの場合、ある年令の一時期だけけいれんを起こしやすいとか、なかには無治療である時期が来れば治ってしまうものすらあるほどです。

 そのけいれんを起こす遺伝子のタイムプログラムがそうなっているのでしょう。

 てんかんに関する病態の解明はこの10年くらい、特に遺伝子レベルで驚くほど進んでいます。日々の進歩に遅れることなく私も頑張らなくては!と思います。

熱性けいれん

 子どものけいれんで最も代表的かつ遭遇しやすい「熱性けいれん」についてお話します。「熱性けいれん」とは、明らかに発熱のある状態に伴い起こるけいれんのことを言います。一般的には38度以上の発熱を伴いますが、時にはけいれんを起こした後、そのような高い熱になることもあります。

 熱性けいれんを起こすこともはとても多く、10人に1人の割合で起こすと言われています。

 もう10年くらい前に土佐市で熱性けいれんの調査を行ったところ、10人に0.8人くらいの発症率でした。また、家族の誰かに熱性けいれんのあることもの法が、ないこと度尾よりも起こしやすいのですが、特に両親どちらかが起こしたことがある子どもは、熱性けいれんを起こしやすいようです。

「単純型」と「複雑型」

 熱性けいれんには大きく分けて「単純型」と「複雑型」があります。「単純型」は時間が短く(15分以内)、けいれんの仕方は

●最初にからだ全体が固くなった後、手足がかくかくとなり、それらの動きに左右差がない。
●短い時間に何回も起こすことがない。(1日のうちに何回も起こすことない)
●最初の熱性けいれんを起こした年令が6歳以下である。

などの条件に当てはまる場合です。これらの条件に当てはまらない項目があるものを「複雑型」と言います。

 大雑把な言い方をすると熱性けいれんが「単純型」のものであれば、何回起こそうが、そう心配はありません。(ただし、3歳までのトータルが10回を超える場合はちょっと話は違います。これは非常に稀なケースです)

 さあ、それでは、「複雑型」の場合はどう考えたらいいでしょう。そもそも、熱性けいれんを「単純型」と「複雑型」に分けたのにはどういった意味があるのでしょう。それは、一見その子のけいれんは熱に伴って起こっているけれど、熱が単なるけいれんのきっかけになっているだけで、もともとけいれんを起こしやすい体質をしていて、最初に熱性けいれんという形でけいれんを起こすことがあるためです。

 そういう体質の子を見分ける指標として「単純型」「複雑型」という分類をします。そして熱性けいれんが「複雑型」出会った場合には、その子が本当に熱だけでけいれんを起こすこともなのか、それとも熱がなくてもけいれんを起こす危険性が高いのか、ということをきちんと診断、場合によっては治療していかなくてはいけません。

熱性けいれんを起こしたら・・・

 熱性けいれんを起こしたときにはどうしたらいいでしょう。

 子どもが初めて熱性けいれんをおこしたら親はとても慌てます。慌てるなというほうが無理なのですが・・・1番大事なのは慌てないことです。というのは、その子が、「どんなけいれんをどのくらいの時間していたのか」ということが、先に述べたように、そのけいれんが曲者かどうかを判断する重要な決め手になるからです。

 もし、けいれんを起こしたら、吐いたりしたもので呼吸ができなくならないように、顔を横に向け、(口にものをいれることは絶対にやめてください、入れたものを噛み砕いて、その噛み砕いたものが軌道を塞ぎ、窒息する場合があります)どんなけいれんを何分ぐらいしたのかを観察してください。

 けいれんが10分以内で治まれば、その時点で病院に行く必要はありません。後日そういった事実があったことを主治医に伝えてください。もし10分以上経ってもけいれんの強さが治まってこない場合には、病院に行き、受診するようにしてください。けいれんが長く続き、止める薬を投与しないと止まらない可能性があります。

 1回以上熱性けいれんを起こしたことがある子どもは、次回から発熱しにあらかじめ熱性けいれんを予防する座薬(抗けいれん剤)を使用することをお勧めします。

 この座薬は37.5度以上の熱があり、さらに熱が上がりそうな気配があるとき使用します。こうした座薬を的確に使用することにより、かなりの確率で熱性けいれんの予防が可能になって来ています。薬剤の使用に関してはそれぞれ主治医の指示に従ってください。