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発熱

2007年02月08日

発熱の定義

 まず、発熱の定義(決まり)について確認しましょう。発熱は一応37.5度以上の熱があることをいいます。37度を超えると、「熱がある」と急いで病院に来てくださる方のいますが、37度から37.5度の間の熱であった場合には、医療側としては、どうしてそのとき「そのお子さんの熱を測ろうと思ったのか!」という理由のほうを大切にします。何か気になることがあって、熱を測ったからだと思うからです。

 それで、熱を測った理由をお聞きするために、「なんで熱を測ったのですか?」とお聞きすると、「普通の水銀の体温計です。」と答えられて、「ありゃりゃー」なんてこともありますが・・・
 つまり、37度から37.5度の間の熱に関しては、熱だけならば、重要な意味を持つことはあまり多くないということが言えます。予防注射などに来られて、病院で熱を測られると37度以上のことは非常によくあることですし、大人でも1日中熱を測れば、37度を超えているときはよくあります(特に午後など)。

 ですから、何もないけれど、熱が37度から37.5度の間であるということは、あまり病気としての意味を持たないし、そう気にすることがないと言えます。

 という訳で、一応熱というのは37.5度以上と定義しましょう。

危険を伴う発熱

 それでは、熱があって放っておいてはいけない場合をお話しましょう。

 1つは、熱があって、何回も吐く、水分も取れないくらい吐いて意識がボーっとしているような状況の場合は、夜中であろうと診てもらえる病院に行って診てもらうべきです。非常に稀なことであうが、髄膜炎が疑われます。

 2つめは熱があって、けいれんを越こし、そのけいれんが十分を過ぎても、まったく最初にけいれんが起こったときと同じような状況で持続し治まる気配の無い場合。

 3つめは、熱があって、非常に強い持続的な腹痛があり、歩行も困難なくらい痛がる場合(歩くのにも背中を曲げて痛がっているような状況)。盲腸(虫垂炎)が疑われます。

 4つめは、熱があって、(といいますが、この場合、発熱の有無はあまり関係ないのですが)、呼吸が異常に早く、頚の付け根や肋骨の間、胸の下が呼吸のたびにぺこぺこ引っ込むような状態で呼吸している場合。気管支喘息や、なんらかの強い呼吸器感染症が疑われます。

 以上のような場合には、時間を問わず、小児科の医師が常駐している病院に行ってすぐさま診てもらう必要があります。

 また、場合によっては、かかりつけの医師に連絡して、なんらかの指示を仰ぐという方法もあるでしょう。これは病院のシステムによっても違いがありますので一概には言えません。

 以上のように実際には本当に発熱に伴う救急を要する事態というのは、思われるほど多いものではありません。いきなり、とても高い熱を発したら保護者としては当然慌てるし「これがたまーるか!」みたいな状況になるのは十分わるのですが、本当に救急を要する発熱はとてもわずかです。


 とりあえず、先に述べたような状況に当てはまらないような状況であれば、手持ちの熱ざましの座薬を使用するとか、額や腋下、太ももの付け根などを氷沈(熱さまシートを貼る)するなどの処置をして経過をみてもいいでしょう。

発熱の原因が重要

 今までお話したように、重要なことは熱の高さや発熱そのものではなく、どうしてその熱が出ているかというこが重要であることが言えます。「それを判断するのが難しい」ということはあるでしょうが、一般的に、熱があっても比較的機嫌がよく、水分補給のできている状況であれば、あわてて医療機関を受信する必要ないでしょう。

 また、熱が高ければ子供はぐったりして元気がなくなることもありますが、解熱剤を使用するとか先に述べたような解熱の処置をしてみて、少し解熱が得られた時点で、本人の状況を観察してみてもいいでしょう。

 よく高熱が出たり続いたりすると、その熱で「脳がやられたりせんろうか?」などと心配されることがあります。この場合も先に述べたのと同様、その熱の度合いや持続期間が問題となるのではなく、その熱がどういう病気で出ているかに左右されます。つまり脳炎や髄膜炎が原因で発熱している場合には、当然そういった心配が出て来ます。

 逆に熱の原因が「風邪」などであって、脳炎や髄膜炎の熱でない場合には、その熱のために脳が侵されるということはありえません。そしてさらに、熱があっても、比較的機嫌がよくて水分が取れるような状態、また、少し熱を下げてあげればこのような状態になる場合には、その熱の原因が脳炎や髄膜炎であるということはありません。

 ここまで述べてきたことをまとめると、発熱は熱そのものが重要なことではなく、熱に伴う随伴症状(熱といっしょに出ている熱以外の症状)がとても重要ということです。

ばい菌は「ウイルス」と「細菌」

 まず、「ばい菌」のことに関してお話しましょう。「ばい菌」には大きく分けて、「ウイルス」と「細菌」がいます。そして、風邪の場合には、その原因の7割から8割は「ウイルス」感染が原因であると言われています。「ウイルス」と「細菌」の違いは何かというと、簡単に言えば、その大きさと性質がまったく違うということです。

 「ウイルス」は「細菌」に比べてとても小さく、「細菌」はそれ自体1つの「細胞」なので「細胞分裂」という方法でどんどん増殖することができますが、「ウイルス」は細胞よりももっとすごく小さく、自分で「細胞」は持っていません。そのため、自分が増殖するためには他の誰か(人に感染するウイルスの場合は人の細胞)の細胞に入り込んで増殖しないと増殖できません。

 そして、抗生物質というのは、自分で細胞を持っている「細菌」の細胞を覆っている膜を壊したり、増殖を抑えたりすることで、「細菌」をやっつけることがでる薬です。

 ですから、抗生物質は「細菌」にしか効果はないし、風邪の多くを占める「ウイルス」感染には抗生物質は効果がないということです。でも、その病気が「細菌」感染であるのか「ウイルス」感染であるのかということは、特殊な場合を除いては、容易なことでは分かりません。

 特殊な場合とは、診察しただけで分かる場合、すなわち、臨床症状と診断所見が特徴的な場合ということで、「麻疹」「風疹」「水疱瘡」「手足口病」「ヘルパンギーナ」などは診察しただけで、「ウイルス」感染だと分かりますし、「溶連菌感染症」と、多くの場合の「扁桃腺炎」は「細菌感染」だとわかりますが、それ以外の大多数の「ばい菌感染症」に関しては、診察しただけではその病原体まで推測するのは、ほとんど不可能です。

 ですから、診察のみではその判別は、ほとんど不可能です。今の日本の小児科医療は、「診察だけでは分からないのだから、とりあえず抗生物質を投与しておく」という方向です。

 そして、そういう流れから保護者のニーズも「抗生剤絶対信仰」が定着しています。このように日本では何にでも抗生剤を投与するため、抗生剤の効きにくい「細菌」がとても増えてきています。細菌も知恵を働かせて(と言っても「脳」はないのですが、彼らも生き残るために学習(変異)していくのです)、自分たちをやっつけるものに対して抵抗力を身に付けていくからです。

「ウイルス」か「細菌」かの判断

 それでは、診断所見と臨床所見だけで、「ウイルス」なのか「細菌」なのか解らない!ということを解決するのはどうしたらいいのでしょう。

 最も確実な方法は「ばい菌」のいる場所から「ばい菌」を捕まえてきて、それを育てて十分増やしてから、その「ばい菌」がどんな「ばい菌」であるかを確かめる方法です。

 しかしこの方法は捕ってきた「ばい菌」を人間で言えばベッドのようなところに寝かせて、えさをあげて育てるのでどんなに短くても24時間くらいはかかってしまいます。その確かめたい「ばい菌」がウイルスである場合には、さらに特殊な技術と時間が必要になります。そこで、その「ばい菌」が「ウイルス」か「細菌」かを推測するために、血液中の白血球の数と好中球の数を推定する方法を用います。「白血球」とは、体にばい菌が侵入してきたときに、それをやっつける役割をする細胞のことです。白血球は「細菌」がからだに入ってきたときには「ウイルス」が体に入って来たときよりも数が多くなるのが一般的です。さらに白血球の中に好中球という名前の白血球がいますが、これは「細菌」がからだに入ってきたときにはその数が増加します。

 つまり、血液検査をして白血球と好中球が増加していることが確認されると、からだに入ってきた「ばい菌」は「細菌」である可能性が高いと言うことが言えるし、そうでなければ「ウイルス」である可能性が高いということが言えます。

ほとんどがウイルス感染症

 緊急事態の場合以外でも「早く診てもらえば早くよくなるのではないか」ということについてお話しましょう。

 実は残念ながら違います。発熱の原因は多くの場合、急性の感染症ですが、感染症は大きくウイルス感染と細菌感染に分けられます。そして、ウイルス感染症が全体のおよそ7割から8割を占めますが、ウイルスの効果のある薬は、今のところ、「水疱瘡」と「インフルエンザ」にしかありません。それ以外のウイルスの病気に関しては、数はとても多いにも関わらず、そのウイルスそのものをやっつける薬というものはないのです。

 熱があれば熱を下げる薬、咳があれば咳の薬、鼻があれば鼻の薬、というふうに、その症状を抑える薬を投与して経過をみるしかありません。いわゆる対症療法というやつです。それでも、ほとんど100%に近いくらいの確率でウイルスの感染症は時間が経てば治ります。これらのことについては、また、「風邪」や「ウイルス性疾患」のお話をするときに詳しく説明します。

熱が下がらない!

 「熱が下がらない」ことについてのお話をしましょう。

 「熱が出た。」「すぐさま病院に掛かって診てもらった!」のに熱が下がらない!「なんでやー!」といういことになるのは当然ですが、察しのいい方は、すでにお解りでしょう。多くの場合、熱の原因は急性の感染症ですかが、その急性感染症の原因の7割から8割はウイルス感染なのです。

 そして、先に述べたようにそのウイルス感染そのものを治癒させる薬剤というのはありませんから、そのウイルスが2日熱の出るウイルスであれば、2日間は熱が続くし、5日熱の出るウイルスであれば5日間はどんな薬を投与しても熱は5日間続くのです。

 つまりその間は解熱剤などを使用しながら、また熱以外の諸症状があれば、その諸症状を抑えながら待つしか方法はありません。けれども、ウイルス感染症の多くは、熱の持続期間は1~3日ですから、一見、病院に掛かって、お薬をもらったので治癒したかのように見えることもよくあります。こう言ってしまえば身も蓋も無いのですが、ウイルス感染の場合には治るときが来れば治るし、それを治すのは、個々人の力ということになります。

 ただ、残りの2~3割の細菌感染の場合には、抗生物質が効きますので、その感染症がウイルス性であるのか、細菌性の感染であるのか、ということはとても重要なことです。
 逆に、ウイルス感染主体であるのに、効果もない抗生剤投与を漫然と続けるということはとても大きな問題です。ただい、診察所見のみでは両者を見分けることは、限られた病気を除いてはとても難しいことで、熱があればとりあえず抗生物質を投与して様子をみる、ということは日本では広く日常的に行われている方法です。が、その効果があるのはわずか2割程度であるということと、そういった抗生物質の乱用が原因で、抗生物質が効きにくい菌がとても増えてきていることが、今とても問題になってきていて、必ずしも正しい方法とは言えません。

 ですから、適正な感染症の治療をするためには「ウイルス」とか「細菌」ということがとても重要なのです。

発熱がおさまるのは?

 過去のいろいろな報告によれば、およそ7割~8割が「ウイルス」感染であると言われています。前述した方法を用いた場合、実際にはどのくらいの人が「細菌」感染で、どのくらいの人が「ウイルス」感染にあたると推測できるかということについてですが、この方法を用いて、発熱を伴う呼吸器感染症の1000例の患者さんの検討を行った結果、およそ6.5割の人が「ウイルス」感染で、それ以外の人が「細菌」か「細菌」の仲間ではあるけれども、ちょっと細菌とは違うもの(今まで触れてませんがそういう一群があります)に感染しているのではないか、という結果が出ました。

表1

 そしてその結果を元に「ウイルス」感染の場合には抗生剤の投与は原則的にしない、というスタンスで治療を行った結果、ウイルス感染の場合の発熱期間は平均で2.2日プラスマイナス1.4日で、発熱期間ごとの内訳は 表1 に示す通り、ほとんどの患者さんの発熱は3日以内に治まることが多いことが分かりました。

 また、表1 に示すように4~7日と熱の持続する患者何もいらっしゃいますが、その病原体が「ウイルス」である限りそれは待つしかありません。中にはわずかですが、最初は「ウイルス」感染だけであったとしても、途中に「細菌」感染も合併して抗生剤投与が必要になる患者さんもいますが(主に中耳炎など)、そのような場合にはそれが起こった時点からの治療開始(抗生剤等よ)で十分な対応ができると考えられます。

 風邪は呼吸器だけでなく、消化器にも起こり、「感染性胃腸炎」イコール「嘔吐下痢」イコール「お腹の風邪」ですが、これに関してはまた機会があればお話します。